NVC(非暴力コミュニケーション)
📅 2022-01-09
NVC(非暴力コミュニケーション)というコミュニケーション手法があります。
僕は約2年前にNVCについて書かれたブログを読んで存在を知りました。
ロジカルに納得できそうだったので、その後2週間程度、毎日のようにNVCについての情報収集を行います。
NVCが自分自身の役に立ちそうかどうか、本気で取り組む価値がありそうかどうか。
また、当初抱いた疑問に対して、自分のなかで納得のいく解答が得られるかどうか。
結論からいうと 「この後の人生はすべてNVCを意識してコミュニケーションをとっていこう」 と思うに至ります。
それからというもの、1年365日、毎日NVCを意識したコミュニケーションをしていますし、今後の人生はライフワークとして、NVCを実践しそして広めていければと思っています。
さて、そんなわけで、僕とNVCの関わりについて書いていこうと思います。
NVCとは
NVC(Nonviolent Communication)は、(カール・ロジャーズらの協力のもと)心理学者マーシャル・ローゼンバーグ(マーシャル)によって体系づけられた「心の底から与えるよう導くコミュニケーションの方法」です。
日本では共感的コミュニケーション・協働コミュニケーション・思いやりのコミュニケーションなどとも呼ばれています。
Microsoftのサティア・ナデラがCEO就任時、ひとを出し抜くような競争文化を変えるために経営幹部全員に薦めたことや、書籍『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』でもティール組織における具体的な手法の事例として記載があることで、あらためて注目されているのがNVC(非暴力コミュニケーション)です。
詳しくは下記の note の記事がわかりやすいです。
https://note.com/nvc_giraffe/n/nd24588aef5c9
一部抜粋した後、僕がどうしてNVCを実践していこうと思ったかを書いていこうと思います。
どんなコミュニケーションか
NVCでは『観察』『感情』『ニーズ』『リクエスト』の4つの要素を意識しながら、大きく次の2つを行います。
- 4つの要素を、率直に表現すること(伝えること)
- 4つの要素を、共感をもって受けとめること(聴くこと・感じること)
NVCを実践する場合、相手がNVCに通じている必要はありません。また、相手側には、心を通わせたいという気持ちがなくても構いません。
キリンとジャッカル
NVCでは『キリン』と『ジャッカル』のふたつのシンボルが使われます。
キリンはNVCの象徴であり、ジャッカルは「NVC的ではないもの」の象徴です。
マーシャルは「何がどう影響して人への思いやりが失われてしまうのだろうか」と研究をはじめ、「言葉」が非常に重要な役割を負っていること、言葉の「使い方」がとても重要であることに気づきます。
次のような、いわゆる「ジャッカルな言葉」を使うことにより、ひとは少しずつ暴力的(支配的)になっていってしまいます。
「どちらが正しいかのゲーム」では、間違っていると苦しむことになります。「自然な分かち合い」による「人生を素晴らしくするというゲーム」をやりましょう。
- どちらが正しいかという評価を与えること
- 罰を与えること(および報酬を与えること)
- ひとを非難すること(および褒めること)
- ひとを責めること(および自分を責めること)
- 罪悪感を与えること
- 恥をかかせること
- 義務を負わせること
OFNR : 『観察』『感情』『ニーズ』『リクエスト』の4つの要素
率直に表現する(伝える)ときも、共感をもって受けとめる(聞く)ときも、どちらのケースでも 『観察』『感情』『ニーズ』『リクエスト』の 4つの要素 を意識します。
この4つの要素をその頭文字をとって『OFNR』ということもあります。
(Observation, Feeling, Needs, and Request)
ジャッカルとは端的に言えば、「ひとに強要をする」言語です。
直接的に命令することだけではなく、道徳的判断や罪悪感や羞恥心を使って、暗にコントロールしようとすることも、強要になります。
たとえ強要により一時的にこちらの言い分を聞いてもらうことができたとしても、(心の底から相手の役に立ちたいという想いからではない以上)いつか代償を支払うことになるだけなのです。
ニーズとともに具体的で実行可能なリクエストをすると、相手の協力を得られる可能性が高まる
僕たちがジャッカルによる強要をしてしまいがちな理由は、それが相手を従わせる最も効果的な手法だと思いこんでいるからでしょう。
(実際は、それらは一過性のものか、もしくは、もっとも効果的とはいえない伝え方にも関わらず)
ひとは(人間として誰しももっている)ニーズを満たしたいと思い、他の人の協力を得るために、何かしらのお願いをしています。
言い換えると、ジャッカルな伝え方は「わたしのニーズが満たされていないから、満たしてほしい」ということを、とても悲劇的な言い方で伝えているのです。
たとえば次のような伝え方で「お願い」しているのですが、まったくお願いになっていませんね。
- 🐺「また部屋を散らかして。お母さんは悲しいわ」
- 🐺「やる気が無いんだったら、もう勝手にしなさい」
NVCではたとえばつぎのような伝え方になります。
🦒「お客さんがくる30分前に部屋の中には洋服とおもちゃが出してあって、いらいらしてきているよ。片付いた場所にお迎えして気分良く楽しんでもらいたいと思うので、洋服とおもちゃを棚にしまってくれないかな?」
どちらが部屋を片付けてくれそうでしょうか。
NVCについて詳しくは前述の記事で確認してみてくださいね。
NVC(非暴力コミュニケーション)の基本|まさる 💖 NVC ユーザー
NVCが役に立つと思ったきっかけ
マーシャルによるセミナー動画が、NVC Japan のサイト内に掲載されています
これをみてとても衝撃を受けたのですが、一方で「本当だろうか?」と言いたくなるような「それまでの感覚ではにわかに信じられないこと」を複数言うのです。
- 「どちらが正しいか」で話をすると人生を豊かにしない
- 「罰を与える」と、ものごとをより暴力的にするし、「報酬を与える」のも同様
- NVCを使うと、侮辱や非難が聞こえなくなる
これらのにわかに信じがたいことを、本当に自分が信じてやっていけるかを確認するために、書籍を読む期間も含め2週間かけました。
反対にいえば、その期間をかけるだけの納得感も感じていたのです。
また同時に次のような疑問もありました。
- 認知が広まっていないのは、なにか致命的な欠陥のある考え方なのではないか
- 資本主義社会との相性が悪く、決して広まることのないものなのではないか
- OFNR がすべてなのか。それ以外の要素も必要なのではないのか
さて、これらを乗り越える NVC に興味を持ったきっかけはなんだったのか。
多様な価値観を大事にするあまり、リクエストができないことがある
コミュニティというものを間近で見ていると、多様な価値観を大切にすることが自然になってきます。
これはコミュニティに携わるみんながそれぞれ自然体で関わる意味でも重要なことではあります。
一方で、それゆえの影響もありました。
相手との立場を踏まえると、相手の事情をよく推察するようになり、かえって遠慮が増えてしまっていたのです。
「これは彼にお願いしたいけど、別件で忙しいみたいだからお願いするのはやめておこう」という具合。
反対に(ずけずけと)遠慮なく無理なお願いをしている人のほうが、かえっていろんなことを実行できていたりします。
嫌々ながら対応している相手も、結局は何らかのメリットがあったりするので、「相手に配慮しないひとのほうが配慮したひとよりも喜ばれるというのはなぜなのか」という疑問がありました。
そしてそれに対し何も有効な考えを見出だせなかったのです。
そんなとき知ったのが、NVCによるリクエストの仕方でした。
「評価を混ぜずに観察から得られる事実と、それによって抱いた感情を伝え、ニーズを元にした具体的で実行可能なリクエストをする」
これほどシンプルで効果がありそうな伝え方があったとは!と、目から鱗が落ちました。
そして「強要ではなくリクエストをする」ことが、いかにそのときの自分に足りてないかを痛感したのです。
自分がしていたのは、リクエストのふりをした『強要』だった と。
マーシャルは「具体的で実行可能なこと」として OFNR を用いた言葉の使い方を伝えていますが、NVCは言葉だけではありません。
どんな言葉づかいをするかといった「小手先の話」ではなく、心の底から与えるといった「マインド」の部分が言葉の使い方とともにNVCの両輪とも言えるのです。
お願いしたことに対し相手が NO を言ったとき、少しでも自分のなかに「どうして YES と言ってくれないのか」と受け入れられない気持ちがあるなら、それは強要だと深く理解することができました。
心理的安全性の高い組織をつくる具体的な手法になりえそう
心理的安全性という言葉は、Googleがパフォーマンスの高いチームを分析した結果共通に見られた特徴として発表したことで、とても有名になりました。
個人的にはCo-Edoはこの言葉が流通する前から同じようなことを大切にしていたのですが、なかなかこれは難しいと思っています。
心理的安全性という言葉が広まったことで、伝えやすくなった面はあるのですが、それでもとても 実践 と 定着 が難しい。
そんななかNVCに出会って「NVCこそ、心理的安全性の高い組織を作る具体的な手法だ」と心より思いました。
さっそく実践するために、まず 「これからNVCを実践していく」ということを全員に対して宣言する ことからはじめました。
もしNVCを実践していくのであれば、まずは周囲に対してNVCについて話をすることを強くおすすめいたします。
NVCを勧めるときも強要をしない
マーシャルのセミナー動画を観たり書籍を読むと分かりますが、決してNVCを勧める際に「NVCが良いものだ」という評価をすることをしていません。
同様に僕も、たとえスタッフに対しても「NVCをやってください」という伝え方を避けました。
ただNVCのことを伝え、スタッフの意見を聞くことのみ。もちろん(無言の)強要にならないように気をつけつつ。
結果的には(NVCに出会って以降)これまで関わっているスタッフは全員NVCに対して自ら興味を持ってくれていますし、書籍も進んで購入してくれています。
とはいえ僕はマーシャルではないので、完全にジャッカルな言葉を排して伝える技術はありません。
たぶんにジャッカルな言葉も混ざりつつ、それでも「NVCが広がることで社会に心地よいコミュニティが増えていく」と心より信じています。
NVC を知りたいと思った方へ
NVCを知りたいと思ったのであれば、ぜひ次のような感じで調べてみてください。
ざっくりと理解する
前述のこちらの記事で、ざっくりと(それでいて広範に)知ることが可能です。
セミナー動画を観る
1本が45分程度あり、全部で4本あるのでそれなりのボリュームはありますが、興味をもった方であればぜひ得るものは多いでしょう。
書籍を読む
マーシャルの書籍は2冊の翻訳本があります。
繰り返し読んでもその都度気づきがあるほど、多彩な内容になっています。
どちらか片方だけでも充分に意味がありますので、ぜひどうぞ。
ネットで調べる・セミナーやイベントに参加する・日々満たされたニーズを記録する
まだまだ認知が高いわけではないNVCですが、それでもネット上には多くの情報があります。
また、NVCのセミナーやイベントもたくさん行われています。
たとえばCo-Edoでは次のようなコミュニティをつくっていて、こんど久しぶりにオンラインのイベントをすることにしました。
また、個人的に「満たされたニーズを記録する無料 Web アプリ」を作っていますので、ぜひご活用ください。
一緒に NVC を実践していきませんか
この記事が少しでもNVCについて関心を持つきっかけになれば嬉しい限りです。
パワハラのようなわかりやすいものだけでなく、支配的な伝え方が社会から減っていけば良いと思っています。
もっとお互いが自分らしく自然体でいられるようなコミュニケーションが広まるには、まずはNVC自体の認知が今以上になる必要があるでしょう。
ぜひ一緒に NVC を実践していきましょうね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。