観劇 : 朗読パンダ 第6回公演「Reading Revolution」
📅 2018-10-08
池袋はシアターグリーン BIG TREE THEATER で行われた、朗読パンダ 第6回公演「Reading Revolution」を観てきました。
わたしの運営するコワーキングスペース茅場町 Co-Edoでは役者・声優の交流コミュニティ #アクターズフール が開かれていて、そこに来てくれた方々も多数出演している舞台です。
毎回Wキャストで行われますが、1年前の公演では片方のキャストのみを鑑賞したところ、その後反対キャストの方々とアクターズフールでお話する機会があって、両方見なかったことを後悔したものです。
というわけで今回は両チームとも観ました。(10月6日のジュルネとソワレ)
結論からいうととても満足し、こんな連続ツイートをしました。
https://twitter.com/ktanaka/status/1048514724957044737
朗読パンダは3本のショートストーリーからなる舞台です。
今回はDVD等の映像にならないそうなので、1作ずつ感想を書いていきたいと思います。
VSR 牡丹灯籠
1本目は「VSR 牡丹灯籠」
落語の「牡丹灯籠」を、スクリーンに映し出す 映像と音楽を使って朗読を行う "ビジュアル・サウンド・リーディング" と名付けた表現手法で紡ぐ作品。
朗読だけでも想像力を使って世界に入り込むことはできるものの、VSRの形式にすることでより深く、そして分かりやすく物語を楽しむことができる。耳だけの情報で物語を理解しようとすると、集中力を切らすと途端に世界から抜け出てしまうこともあるので、この形式はすべての朗読劇が取り入れると良いと思う。
もともとは22章からなる長編だそうで、お札はがしまでの12章分をテンポよく、怖いところも笑えるところも交えて、飽きさせない構成であっという間な30分。そして演者の朗読がとても心地よく耳に入ってくる。完成度という意味では3本中もっともまとまった1作だったのではないかと思う。
ちなみにこの作品、大長編の原作を30分のVSR形式の舞台に脚色していますが、脚本の大部分をCo-Edoで執筆したそう。
インターネットが使えて終日作業ができ、フリードリンクもついて1日1,000円。お得なスペースです(宣伝)
真面目報道番組にゅ~っス!
2本目は「真面目報道番組にゅ~っス!」
Co-Edoのスタッフもしてくれている逢莉ちゃんも主要な役で出演している作品。
昨年第5回公演で評価の高かった「義経千本ノック」の緩い続編とのこと。前作と一部設定を共有しているものの、お話自体は独立しているため、前作を知らなくても充分に楽しめたはず。前作を知らないと笑えないようなシーンは存在しない。
前作は過疎に悩む富田村で発見された10分の無声映画に村のメンバーで生アテレコをするのが見せどころだったが、今作では複数のニュース映像をふんだんに使って、全編を通してアテレコ満載、見せどころ満載の内容に。
キー局の報道番組のメインキャスターは、自分の夢を叶えるために上京した富田村の前村長、(前作でアテレコで活躍した)村役場の職員があとを託され現村長になったという設定。番組内のコーナーで、地方局が富田村を紹介するのだけど、地方をバカにする内容にキー局が勝手に改変して放送してしまう。生放送のさなか、内容に憤る村長およびそれに賛同するひとたちと、視聴者のために番組を進めようとキー局側の意向を汲んで自らの出身地を助けられないもどかしさを隠しながら非情に進行を進める元村長のキャスター。
物語は虚構新聞よろしく現実にはありえないニュースを真面目に紹介していき笑いどころ満載な内容。観客は徹頭徹尾何も考えずに楽しめる作品。まさに出演者の力量あってのコメディ。
なのだけど。
ニュース実況時のおふざけのセリフに混じって、さらっと流れていくそれぞれの立場を象徴するセリフの数々。「未来へ続いている」「今が充実していることが大切」「歴史は回る」「最後はもとに戻る」「諦めてはいけない」「戻るべきところがある」これらはすべて新体操の実況中に発せられるのだけど、夢を持って村を出た前村長、村長についてキャスターになったものの地方局への左遷をきっかけに村長からも卒業するキャスター、前村長の心を取り戻そうとする芸人、立場的に迷いのあるメインキャスターに対し自分の覚悟を伝えるキャスターの実況セリフ。
それぞれの葛藤を描きつつも、それらを観客に感じさせる暇もないほどのスピードで物語は笑いとともに終了していく。
もしかしたらこの葛藤自体が伏線となって次なる作品へ続いていくのかも?
ちなみにこの作品中、いくつかニュース映像が出てくるのだけど、そのいくつかはCo-Edoのセミナールームを使って撮影された。干した蛇を魚だと偽って販売した会社の社長の謝罪映像など。
Co-Edoには1時間1万円でプロジェクターやマイク等すべての設備が使える最大75名収容のセミナールームがあります。とってもお得な貸し会議室です(宣伝)
鎌倉モアレ
3本目は「鎌倉モアレ」
朗読パンダの最後といえば、涙腺を刺激してくる朗読要素の少ない通常の演劇作品。
終盤になるにつれ、だんだん朗読しなくなるといわれる朗読パンダですが、この作品も含め要所で朗読が使われるのが山本演出の特徴。本作でも主人公のふたりは出会い系アプリで交換日記(メール?)をしているのだけど、第4回公演の「太陽に意志はない」と同様、リアルに会話するシーンは台本を持たない通常芝居で、メール等でコミュニケーションをとっているシーンは舞台後方で朗読が行われる。
そして本作では、その設定自体を使った物語の序盤を面白くする仕掛けがあって、まずそこにやられた。メールをしていたひとが「このひとだったの!?」という具合に判明するのだけど、おそらく朗読パンダを何度も見ているひとほど、より楽しめたのではないだろうか。VSRが表現手法として作品を面白くしているとすれば、鎌倉モアレは間違いなく「演出」が物語を面白くしている。
男性側の主人公はバイトをしながら定時制高校に通う25歳の写真家志望の青年。決してイケメンキャラではないのだけど、その彼がイケメンに見えてくるのが朗読パンダ。彼を慕う幼馴染と彼女を好きなイケメン。三角関係の様相を呈しつつ、すんなりとはいかないのがこの作品。イケメンが報われるとは限らないのも朗読パンダ。
アドリブをふんだんに織り交ぜた役がいくつかあるのだけど、とてもうまくはまっていた。主役はもとより、スキルのある役者が脇を固めていて安心して楽しめる作品だったと思う。
鎌倉を中心とした写真が何枚も舞台上に映し出され、他の作品同様映像が物語に絡んだ一作。今回は3本を通して映像の使い方が素敵でした。
ちなみにこの作品だけは一切Co-Edoが絡んでない。次回は舞台をCo-Edoのある茅場町にしてはどうか。
隅田川の向こうに見える高層マンション群。ニューヨークもといチューオークの景色も、鎌倉に負けてない……はず…
ブリッジ映像
朗読パンダの公演では、1作1作の間にコマーシャルよろしく短い映像が挟み込まれる。スタイルの違う作品に切り替わる前のリセット的な位置付けだと思う。
いつも趣向を凝らした作りになっているのだけど、今回は特に良かった!
パンダのキャラクターが出てきて作品紹介をしていたのだけど、やんわりとスパイスをふりかけるかのごとくコメントの内容がそれぞれの作品の楽しみを増やしていた。
毎回このスタイルが良いのではないかと。
たのしみな次回公演
そして次回公演の予告が最後に。
2019年8月、池袋は 東京芸術劇場 シアターウエスト Theatre West にて!
ジュルネ鑑賞後に ↓ のようなツイートをしたのだけど
朗読をたっぷり楽しめるスタイルVSRの映像がともすれば難しい作品を分かりやすくし、報道対決を軸とした作品でニュース映像が演者同士の掛け合いをよりコミカルにし、最後の青春群像劇でも映像がお話に絡み、朗読エンターテイメントを謳う朗読パンダの完成形に近い公演となっているのではないかと思う pic.twitter.com/N7m7biJdaP— 田中弘治(Co-Edo) (@ktanaka) October 6, 2018
朗読エンターテイメントというスタイルをより深掘りし、進化させた次回作になるとしたら、本当に見逃せません。
朗読パンダを観ていると未完成の良さというのもあるなあと。
進化を続ける朗読パンダ。
いまから2019年8月の公演が楽しみです。