2階建て構造ですれ違う話し合い


📅 2018-09-29

お久しぶりに kohji.blog で記事を書いてます。
いまだに独自ドメインについてはhttpsでのアクセスができないというのはどうなんですかね。
デザインを変えたらいけるかなと思いましたがだめでした。残念。
対応方法あるよというかたいらっしゃいましたら、教えてください。

さて本日はタイトルの通り「2階建て構造」の話です。

2階建て構造の意見や、2階建て構造の議論、についての話といったほうが分かりやすいでしょうか。
意見や議論が食い違うとき、しばしば、主張が1階部分と2階部分ですれ違っているということがあります。

2階部分の議論をしたいのに、相手が1階部分の議論をしているため、話が噛み合わないという感じです。

1階部分とは一般論と言い換えても良いかもしれません。たとえば

  • 一般論としては答えはある程度でているけど、今したいのはそれを前提としたその先の話
  • 一般論としては正しいけど、今話題にしている個別の案件については別の対応が必要な話

のような感じです。

たとえばWebの世界では「IDパスワードを使って、個人を識別する(認証する)」「パスワードは暗号化(ハッシュ化)されて保存されていないといけない」「とはいえ暗号化されずに保存されたサイトはあり、しばしば漏洩する」「そのためパスワードは他のサイトと共通のものを使ってはいけない」というときに、ではどのようにユーザーがIDパスワードを管理すればよいかというと**「パスワード管理ソフトを使用する」**というのが一般的な意見となります。
5つくらいのパスワードをサイトに応じて使い分けたりするのは良くないし、共通のルールでサイトごとに別々のパスワードにしようとしてもそのルール通りにパスワードが設定できなくて破綻したりします。現在はブラウザやOSがパスワード管理をしてくれるものもあり、多くの人がパスワードを暗記するということをしていないのではないでしょうか。

上記の例で、仮に「すべてのサイトのパスワードを覚えることは不可能だ!」という意見があり、1階部分の議論とは「パスワード管理ソフトを使おう」という結論に繋がるような議論(話し合い)ということになります。
それなりに知識があったり、すでにそのことについて考えている人であれば自明の結論があるものを、ここでは1階部分の議論と呼ぶものとします。

それに対し2階部分の議論では、セキュリティの専門家が「すべてのサイトのパスワードを覚えることは不可能だ!」といい、その後、メールによる認証の話になったり、WebAuthnという認証のプロトコルの話になり、その過程では「パスワード管理ソフトを使って認証するのはありえない」という意見も出てくるのではないかと思います。

1階部分の議論しかできない場合、この「パスワード管理ソフトを使って認証するのはありえない」という意見は奇妙に聞こえるはずですし、この人はセキュリティについて何も分かってない素人だ、ということになるかもしれません。

しかし実態としては、2階建て部分の議論をしている人にしたら「パスワードというものは本来記憶するものであり、パスワード管理ソフトを使わないと扱えないIDパスワードを使って個人を認証しようということはあるべき姿ではない」という意見になるでしょう。

さて、ここでは2階建て構造について理解してもらうための例示でしたので、パスワードの件はこれで終了します。(異論はあるでしょうがあくまでたとえ話です)

分類すると

  • 1階部分の結論をまだ導けていないひと
  • 1階部分の結論は分かっているが、2階部分があることに気づいていないひと
  • 2階部分があることに気づいているひと

ということになります。ここで2階部分については、不確定要素もあり、最終的にどのように結論付けるかはそのひとの 知識や価値観によってかわってくるもの としましょう。

このときあなたが、2階部分の議論をしようとしていたとします。しかし相手はまだ2階部分があるということが分かっていません。この場合、2階部分があることが気づいている人のみが、その状態を解消することができます。

  1. 2階部分の存在を教え、相手を2階部分に引き上げる
  2. 1階部分に降りていき、2階部分の議論をしない

このどちらかとなります。
普段の日常的な会話では、後者が選択されます。
2階部分の話だと相手が認識できなかったとき、その状況で前者のように相手を誘導することは困難なことが多いです。

しかしながら、仕事であったり、その他特殊な状況のときは、その困難な作業が必要になることもあるため、しばしばお互いがストレスを感じる状況が生まれます。

先日のある話し合いがまさにそれでした。
いつもの利用者との会話であれば、相手に合わせて会話の方向性を変えていくのですが、そのときは事情があってそういうことをしても意味がなかったため、2階部分の話をしているということを、様々な表現を使って行ったのですができませんでした。

他の話題であっても相手は1階部分の結論で諭してこようとしていたことから、後々よくよく考えた結果「そのひとの周りに1階部分の結論を出せていない人が多く、いつも1階部分の結論を導こうとしている」ということだったのではないかと思います。

わたしが運営しているCo-Edoはコワーキングスペースですから、ほんとうに様々なひとが訪れます。
それで自然と身についたのが、この、積極的に2階部分の疑問をぶつけていくというスタイルです。日常的にすることで、その人の価値観がほんとうによく分かってくるのです。

1階部分にいる場合、なかなか2階部分があること自体を認識できません。
そのため、2階部分の質問をしても、2階部分の意見を伝えてくれるひとと、1階部分の(自明な)答えを伝えてくるひとといて、後者の人のなかには知識のない相手を見下すひとが少なからずいるのです。

できるひとは間違いなく、1階部分の話のときは1階部分に降りて話をし、2階部分の話のときは相手の知識レベルを確認しながら自分の考えを伝えるということをします。(このとき相手を見下すということは絶対にありません)

先日、コワーキング界隈の運営者や利用者が集まって、コワーキング利用時のセキュリティについて話をするイベントをしました。
このときとてもよい話ができたなあと感じたのは、いま振り返ると、1階部分と2階部分というのを明確に分けて話ができたからかもしれないと気づいたのです。

もし仕事やその他のシーンで、話し合いがすれ違ったときに、この2階建て構造を意識するとうまくいくことも増えてくるかもしれませんね。

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Contributors: TANAKA Kohji